4 変なもの: 2005年8月アーカイブ

オンライン小説を読みました。
夏になると死者が見えるという少年が、太平洋戦争中に空襲で亡くなった少女とコンタクトを取るというお話で、別にこの小説自体は、一生懸命書かれているなああ、比較的良心的なんじゃないのー、ですけれど、わたしにはどうでもいい存在でありお薦めなど決していたしません。最後には『イイ話』に収斂されます。
ああ、『イイ話』の集積がどれだけ鬱陶しいことか。

気になったのがー、
文中で、太平洋戦争中で亡くなった少女が、
自分が死ぬことになった戦争を
『太平洋戦争』と言っているところですね。作者は色々資料を調べてお書きになっているようなんですが。
この話では、死者は、死ぬ前のまま、自分が死んだ場所から動くことができない、周囲の状況も、主人公と出会うまでわからない、という設定になっています。でも『イタコ』の少年と会った途端、彼女は自分が『太平洋戦争』の空襲で死んだと言うんだよ。
太平洋戦争の時、国内で死んだ、ごく普通の少女なら、当時の日本側の「太平洋戦争」の呼称は『大東亜戦争』なんだから、『大東亜戦争』と言うんじゃないのか。

そして、
主人公が、鮮やかな光に満たされた夏にのみ、死者たちとコンタクトを取れるのは何故か。作中では、主人公の父が、夏に亡くなったからかもしれないと語られるだけだ。
以下はわたしの記憶から来た推測ですが、わたしを含む1960年代以降に生まれた日本人は、戦争を知らない人々が大人になって影響力を持つようになったころに育った。わたしは子供時代に、平和教育という名で、太平洋戦争末期の日本人非戦闘員の悲惨な面(国家総動員されてるからみんな戦闘員なのか?)……特に、原爆投下、少女までかり出された沖縄戦、終戦の玉韻放送……といった事件の映画やお話を叩き込まれた。
すべて、眩しい夏が背景になっています。
もちろん真珠湾攻撃から終戦まで、太平洋戦争は四年に渡って続いたわけですし、北方での戦闘も、戦後のシベリア抑留もあります。日本人女性や子供に対する悲惨な事件に限っても、東京大空襲は三月です。
ですが、子供時代の教育によって、わたしや、恐らくわたしとほぼ同世代(作品読んだ感じだと、プラスマイナス5歳くらい。知り合いではない)であろう作者には、太平洋戦争=夏というイメージが、刷り込まれているように思います。

上記のような二つの事実を踏まえると、
さきほどの小説の、
『死者とのコンタクト』を取るのが『夏』だけ、
戦時中に亡くなった少女が『太平洋戦争』と言う、などは、
もしかして『叙述トリック』ってやつですか?
死者とのコンタクトなんて主人公の思いこみ妄想に過ぎないんだよバーカ、が結論か。
……ああ、今年の目標はバーカバーカと言わないことだったのだが、しかし、こういう『イイ話』は、書き手としてのわたしには、敵なんだよ。
読み手としてはどうでもいい物体である。一個一個はどうでもいいが集積が鬱陶しいだけ。
敵に分類される作品を書くやつは、その人がどんなに『いい人』『立派な人』だろうと、敵なんだよ……

いや、叙述トリックを駆使し、わたしの読み切れなかったところで、殺人事件が起こり、犯人が明かされているのかもしれない。
だったらすげーんだが。そんな面白いことはないのだろうなやはり。

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