モグラスパイ

モグラの一匹が私の監視役に雇われました。
間諜モグ号は、毎日報告書をタイプしています。
忠モグ・モグ公(ペット予定)は、実はペットの振りをしたスパイでした。
全くうまく化けたものです。
私の心内をモグ公が想像して「私」の一人称で書いています。


私の書いた文ってエキセントリックってよく言われるの。


あーいきなりこう来たか。


『でも、キミのエキセントリックな個性がもっとも生かされるのは、小説ではなく教育関係者へのインタヴューによる耽美ドキュメンタリーだと思うな』馬鹿男がそんなことを言ったのでちょっとむかついてるの。馬鹿男に私の深遠なエキセントリシティーが理解できるわけないじゃん。


上記発言をした男性はやはり教育関係者へのインタヴューによる耽美ドキュメンタリーの
プロデューサーなんでしょうか。エキセントリシティーって言葉はあるんでしょうか。
(あるようですよeccentricity)

モグ公はクラーク・ノヴァ・タイプライターに向かってモグモグ言っています。


私にとって私以外の全人類はモグラ並みだって言うことをあいつらに思い知らせたいのよ。ああでも、モグラの國にいれば、いつか王子様がモグラ馬車でやってきて、私のナルシシズムを死ぬほど満足させるわ。
王子様はニック・ケイヴに少し似ているの。ちょっとイヤな王子だな。
モグウッド・バビロンのトップニュースになって、
王子様は新婚三日目で死んでしまいます。
ああそれは、豪華クルーザーの薔薇の花でいっぱいの船室で、彼は私の小説を朗読し、彼は私の甘美で戦慄すべき文章の数々を朗読しているうちにその内に潜む毒に取り憑かれて死んでしまうよ。そして私はモグラ刑務所に入れられる。
刑務所に引きずられていく私は、長いドレスを身に纏い、毅然としています。エリザベート・バートリが城の一室に監禁される瞬間もかくやという有様です。詰めかけた報道陣のフラッシュがバシバシ焚かれます。私は、伝説の謎めいた女として語り継がれるのでした。
ああでも城の外にはカフカがうろついているわ。
助けを求めましょう。
私は閉じ込められた塔の中で伸びた長く美しい髪を小窓から地上に垂らします。吊りじゃなくて釣りですわね。


私は、モグ公が打ち終わってタイプから飛び出した紙を拾っては読みます。


おほほ、釣れますか天守夫人
釣るなら私の自我とかですかね。
まあ、諸星大二郎先生の太公望みたいなことをおっしゃいますこと。『無面目・太公望伝』収録。

三千世界の烏を殺し焚書坑儒をしてみたい。


私がモグ公に「お座り」「待て」「お手」をさせたら、一度ペット化されたモグ公はパブロフのモグのようにお手をしました。
ぬへっぬへっと小狡く笑います。
私はモグ公の首輪を掴み、モグ公をガシガシ殴りました。動物虐待小説がやりたいって前から言ってたでしょう。手近にある武器になりそうなもの。鉛筆削り器とか、ホーローの灰皿とかで、モグ公の短い毛に覆われたモグっと堅い締まった肉を殴りつけるのが楽しくなってきて、やばい。
動物虐待小説は良くても、リアルで虐待してはいけない。

私は人道的にモグラと対話して問い質そうとします。
「ペットのモグラの振りをしているモグラよ」(モグ公のリポートの中でドレスを着ていたのが気に入ったので、嗜虐的な西洋貴婦人の心持ちになってみます)「汝の雇い主は誰ぞ」
ですが、モグ公はすっかりペットに戻り、散歩に行こうと言います。
さんぽにいくのめんどーだな。

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もちろんこれは、あまりに失礼ではあるが、
原作ウィリアム・バロウズ/監督デヴィッド・クローネンバーグの映画『裸のランチ』に霊感を受けて書きました。
映画版の、頭の中の迷路を歩くような感じがかなり好きだ。

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このページは、間瀬純子が2007年6月19日 22:13に書いたブログ記事です。

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