レンタルビデオ屋に行くと思うんですけど、男の人はいいですね。
店の奥のほうに、ピンク色の背表紙のコーナーがあって、そこの豊富な在庫の中から、
自分の欲望に合ったビデオを探し放題に探せる。
しかし、欲望は別に男のみが持ってるわけではなく、
たまには女の人(含むワタシのようなダメ女)もビデオ見て、甘い官能的な幻想を満たしたりしたいわけです。
女の人のためのエロいビデオというのは、あるんだろうけど、あのような独立したコーナーにはなっていない。
うーん。そして過去見たたくさんのエロい映画でも、官能的にもろに「来る」映画は本当に少なかった。
そんなに特殊な趣味ってわけでもないと思うんだけどなああ。
過去に「おお」と思ったのは、
いきなり巨匠ルキノ・ヴィスコンティのちょっとマイナー作『熊座の淡き星影』。
格調高い映画で、エロいシーンなんて全くないのですが。
イタリアの荒れた保守的な土地を舞台にした、病んだ上流家族の物語。家族には悪い噂がつきまとい、
その中の一つは、姉と弟の近親相姦疑惑。二人は陰湿に非難されています。
その姉と弟の愛憎劇がたまらなかった。最後に弟は、姉の名を呼びながら、自殺する。
姉役のクラウディア・カルディナーレがきれいだったなあ。
他には、やっぱりコレです。
強制収容所の看守と囚人の少女が、戦後再会し破滅情欲に落ち込んでいく、リリアナ・カヴァーニ監督の『愛の嵐』。
ナチの残党に追いつめられ、二人は官能の中で、死ぬことになります。
(ビデオになった時、『エロティシズムとは、死にまで至る生の称揚である』というバタイユの言葉が引用されていた。
恥ずかしいと思いつつ、うっとり)
どうも私は、迫害された、訳アリの恋人どうしの、愛憎入り交じったヤバい情念というのに弱いみたいです。
で、最後は悲劇がGOODです。映画関係者の皆さん、私のためにそういう映画をがんがん作ってください。お願いします。
まー、その数少ない『来た』映画の中から、今回はこれだ。ジェニファー・リンチ監督『ボクシング・ヘレナ』
数年前に見て、結構はまりましたね。いや、作品的には、B級で、稚拙な部分も目立つが、それも許す。
天才外科医ニック(ジュリアン・サンズ)が、ビッチ系宿命の女「ヘレナ」(シェリリン・フェン)にベタベタに惚れる。
しかし、ニックは粘着質で早漏で、死んだ母親恐怖症で潔癖症でうじうじしていてヘレナに相手にされない。
図々しいところもあるニックは、せこい手を使って、ヘレナを自分の屋敷に連れ込む。
逃げようとしたヘレナはちょうどやってきた自動車に轢かれる(おいおい)。
が、ニックは天才外科医なので、自分ちの『研究室』で、ヘレナの手術をする。
目が覚めたヘレナは、自分の両足が切断されていることに気づく。あーあ。
ヘレナは、ニックの元で監禁状態。そして逆らおうとすると、今度は両手を切り落とされてしまう。
ヘレナは閉じこめられ、何もかも、ニックに頼らざるを得ない状態で、ニックが全世界だ。
次第に妙な共生関係が生まれてきます。やっと昔の男が助けに来ても、ヘレナはニックをかばおうとする。
で、すいませんいきなりネタばらしすると、
最後にこれは全部ニックの妄想だったということがわかる。ニックは、ヘレナの手足を切断などしていないのでした。
しかし、映画はそういうふうにニックの妄想として終わっているが、これ、どう考えても、女の妄想映画だよ。
しかも、かなりのダメ女の妄想。
ニックがジュリアン・サンズという超美青年だから成立する、
ダメ女の妄想爆発映画。相手役がかっこわるかったら、ただの激悪犯罪映画だ。
ということで、これから、なぜこの映画を私がダメ女妄想映画と見るのか書いていきます。
監禁される美女ヘレナは、当然その状況をいやがっているけれど、
妄想の中での『監禁』は、ある種のダメ女には魅力的な状況ではないでしょうか。だって、何にもしなくていいじゃん。
しかも、その状況は、監禁した男が作りだしたものだから、自分は堂々と被害者として無責任に存在してればいいのです。
監禁されて手足切断されて何にもできないから、監禁したやつが何でもやってくれる。心の底から奉仕される。
なんてラクなんだ〜。
そして、監禁した男は、超美青年。監禁の理由は、自分にベタ惚れだから。
監禁したいほど自分を愛しているから。そこまで惚れられている者の特権として、監禁されている自分は、
監禁されているにも関わらず、監禁した者に絶対的な精神的優位を持っている。
何にもせずに支配願望も満足させられるのだった。怠惰なくせに世の中にルサンチマン(怨念)持ってて、
ルサンチマンの裏返しとして世間に復讐/権力志向のあるダメ女にとっては全く夢のようなシチュエイションではないですか?
ニックには婚約者がいて、ビッチ系のヘレナに較べるとずっと地味な女だ。ヘレナに同一化できた幸福な視聴者(ワタシとか)は、婚約者を見て、冴えない女だなーなどと思う。
ヘレナが監禁された屋敷に、婚約者がやって来て、ニックとやろうとするのだけど、ニックは早漏だから失敗。ヘレナ(=視聴者のダメ女)は、物陰からそれを見て、ニックをあざ笑ったりできる楽しみが味わえます。
ニックは、ヘレナのために、娼婦を呼び、自分が『出来る』ことを証明して見せようとします。ニックは、娼婦とセックスしながら、ヘレナに、自分の男性的能力を見てくれと言わんばかりに、しきりに流し目を送ります。やってる相手なんか思いっきりどうでもよく、全てヘレナのため。
他の女はみんな、ヘレナに較べれば、クズ。監禁され、手足を切り落とされながらも、自分は世界一の女なのです。あー、素晴らしい。
ジュリアン・サンズは、どこか影のある凄い美青年です。監督・脚本のジェニファー・リンチやダメ女の視聴者は、彼にクラクラしつつ(ジェニファー・リンチも絶対クラクラしてるに違いない)、彼がクラクラしている美女ヘレナに自己同一し、そして他の女がクズ扱いされることで、よりいっそう自己愛を満足させる……。なんだか、ダメ女の権力志向が、もろに表れてるよなああ。
ジェニファー・リンチは、あのデヴィッド・リンチの娘で、イレイザーヘッドのへんな赤ん坊のモデルになったり、足が不自由だったりと、色々と辛い人生を歩んできているようだ。そりゃ、ジュリアン・サンズ使って、こんな映画の一本も撮りたいよなー。
頑張れ、ジェニファー! 私は応援してるぜ。
でも、お願いだから、セックスシーンに「エニグマ」流すのは、ベタすぎるのでやめて欲しい……。
01.4.9